風の聖痕 1巻


風の聖痕(スティグマ) (富士見ファンタジア文庫)
富士見書房
山門 敬弘

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アニメと比べて一度は ...
こういう人になっては ...
これがデビュー作とは ...
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まず始めに、申し上げることがあるとすれば、
それはこの作品が永遠に完結することはないだろうという事です。
作者である山門敬弘氏が既に亡くなってしまっているからです。

正直なところ、
もしかしたらそれはとても酷い言い草であるのかも知れませんが、
自分は
「このシリーズを完結させてから死んで欲しかった」
そう、今でもたまに思ってしまいます。
もちろん、それは「最悪でも」という前置き付での話です。
この作者が書く他のシリーズも読んでみたかった。
でも、
それが叶うことなくとも、
せめて、
「このシリーズの最後だけは見たかった」
そう、思ってしまうのです。

それほどに好きな
大好きな
本当に大好きな作品です。


自分がこの作品の何に魅せられたかといえば、それは他に類を見ない主人公・八神和麻の在り方にこそあるといわざるを得ません。

意思ある現象である<精霊>の力を借り、その力を行使する<精霊術師>と呼ばれる存在がいる世界。
精霊は火・水・土・風の四種が存在し、精霊術師が感応できる精霊も一人につき一種だったので精霊術師も四種、それぞれ炎術師・水術師、地術師・風術師と呼ばれる。
日本には炎術師の神凪一族と地術師の石蕗一族という古より国を支え続けてきた世界に名だたる精霊術師の名家が二つ存在する。

この作品の主人公はその内の神凪一族本家直系の人間である。
しかし彼、「八神和麻」はその名が示すとおり神凪一族とは縁を切っている。
より正確に言うならば放逐されたのだ。

精霊術師の力は精霊への感応力こそが全てと言っていい。
もちろん同じだけの精霊へ感応させられる能力者同士が対峙すれば技術や戦術が重要になってくる。
僅かの差ならばそれでひっくり返すことも出来る。
しかし、数は力である。
そんな技術や戦術が介在するだけの余地を作れないほどに神凪の火の精霊への感応力は高く、中でも本家の者は分家の者達を「人の数」という力を、その感応力の差で押さえつけられる程にずば抜けていた。

そんな本家神凪一族の系譜に連なる者でありながら、彼「八神和麻」は火の精霊への感応力を一切持たずに生まれてきたのである。

彼の「神凪和麻」としての人生は悲惨の一言に尽きた。
「力こそ全て」
圧倒的な力により日本を影から支えてきた神凪一族は長い歴史の中で歪んだ価値観を育んできた。
「火力こそが全て」
本家の圧倒的な力により押さえつけられた分家の鬱屈と、その神凪の思想が結実し、彼に与えられたのは壮絶なまでの私刑の嵐。
「戦闘力こそが全て」
毎日が死と隣り合わせという日々。
それも同じ一族の、同年代の子供達による純粋なる悪意が成す私刑。
そして侮蔑と嘲笑を投げかける大人たちの声。
まさに地獄のような日々。

しかし、それでも彼は優秀だった。
少なくとも「炎術の才」というただ一点さえ除けば。
知能も、運動神経も、体術も、精霊を用いない術も同年代の中では敵うものなどいなかった。

しかし、神凪という一族においては「そんなもの」に価値はなかった。
炎を操る資質こそが全てだった。

そんな彼に転機が訪れる。
一族の至宝「炎雷覇」継承の儀。
現在の持ち主である宗主が不慮の事故により片足を失い炎雷覇を扱う機会を失っていたため、次代を担う若者にその莫大な力を秘める降魔の神剣を托そうと言うのだ。
選ばれた候補者は二人。
現・宗主の娘「神凪綾乃」と、かつて宗主と同等の力を持つといわれ、宗主が片足を失った現在<神凪最強>を誇る神凪厳馬、その息子である神凪和麻である。
一族本家の中で年齢的に適している者がこの二人だけであった事と厳馬自身の横槍もあった。

そして結果、負けた。
やはり彼には炎術の才がなかったのだ。

そんな彼に両親が告げた言葉は辛辣の一言だ。
「無能者はいらない」――父・厳馬
「あなたは優秀な子供『でした』。これで炎術の才さえあれば愛せたことでしょうに。一千万入っています。今後の生活の足しにしなさい。」――母・深雪

彼は逃げ出した。
両親から。
神凪から。
日本から。

それは神凪和麻、十八歳のある日のことであり、
「神凪和麻」という存在が死んだ日である。



その「ある日」から四年の月日が流れる。
ここまではあくまでプロローグであり、あくまで前日譚である。
物語はここから始まる。
彼は、「八神和麻」は日本に帰ってきた。
風の精霊を操る術と、「とある秘密」と、癒える事なき悲しみを抱えて。

そして事件が起こる。
まるで「八神和麻」の帰国を待っていたかのように。
神凪一族を、風の精霊を操る者が、殺して回る、という事件が。
もちろん疑いは八神和麻にも向けられる。
神凪の刺客が次々と彼に襲い掛かる。
その全てを返り討ちにする和麻。
かつて手も足も出なかった者達を。
かつて和麻を蔑み死も厭わぬ私刑を繰り返した者達を。


後々分かることであるが彼「八神和麻」は敵対するモノに容赦しない。
老若男女はもちろん問わず、
操られていたり、脅されていたり、
そんな事情も斟酌しない。
あるのはただ一つ、冷然な事実である。
即ち、敵・即・斬。
敵対するものは皆殺し。
当然の事である。
自分の命を狙ったのだから。
命を奪おうとするという事は奪われる事を覚悟しなければならない。
脅されていようとそれは同じだ。
少なくとも「誰かの命」と「和麻の命」を秤にかけてそちらを選んだのだから。
それは当然の摂理である。


そんな冷酷さを併せ持つ和麻が神凪の刺客を、
かつて自らを嘲弄し、いたぶり尽くした者達を、殺しはしなかった。
少なくとも彼の前に立った者達は彼の命を狙ったのではなく(一部例外あり)、宗主の下へ連行しようとしていただけなのだから。
そしてまた、かつて強者であって彼らが弱者であった自分をいたぶったように、
今、強者である自分が、弱者である彼らをいたぶる事で「同じ存在」に落ちるなど「バカらしい」事だから。

「俺はお前達とは違う」

それは彼の無言の主張のように自分には思えました。


彼は知っている。
「何か」をするならば「何か」をされる事を覚悟しなければならない。
暴力には暴力を。
殺意には殺意を。
因果応報。
その覚悟が彼にはある。


他にも彼の魅力はありますが、全てを書き連ねると長くなり過ぎるのでここまでに。
機会があれば他の巻の紹介の際にでも書きたいと思います。


これだけ書くとどうも殺伐としすぎた作品のように見えますがこの作品には二人ほど殺伐とした空気を和らげる存在がいます。

一人はかつて炎雷覇を和麻と争った宗主の娘・神凪綾乃
炎雷覇の力もあり、また本家の若手が彼女と後述する煉しかいないせいもあり神凪の若手№1という存在です。
しかし宗主である父にも、そして神凪最強の神凪厳馬にもまだまだ敵わぬ発展途上にある娘です。
性格は猪突猛進・直情径行・若干アホの娘の気すらあり。
作中尊敬する叔父が殺された時に噂一つでプッツンして父(宗主)と会談中の和麻に斬りかかっています。
おまけにそこで父に怒声一喝、基本的に温厚で娘バカの宗主に「バカ娘」呼ばわりされています。(ちなみに厳馬にも馬鹿娘・我侭娘呼ばわりされています)
その後もやたら和麻に突っかかりますが、基本スタイルが無視の和麻の前に空回り一直線。
ラスボス戦でも一度あっさり敗北して、ビビッて腰引けちゃいますし、正直この一巻ではあまり良い所がありません。

まぁそれでも、お膳立てされた上での事ですがラスボスにトドメ刺しますし、死に掛けたときにはヒロインらしいイベントもあったり、なんだかんだで和麻の心の内に入り込むことにも成功します。
まぁ彼女に関してはその魅力が開花するのは二巻以降ですね。
もう完璧なまでのツンデレ、どうしようもないほどにアマノジャク。
和麻の素直じゃない可愛がり方に怒ったり、怒ったり、怒ったり。
精霊術師としても和麻に導かれ成長していく事になります。


もう一人は和麻の弟・神凪煉
和麻と違い炎術の才に恵まれた煉は、まるで無能が移るとでも心配したかのように幼い頃より和麻から隔離されて育てられましたが、そんな思惑など一顧だにせず兄である和麻を尊敬し懐いています。
ええ、弟・・・弟なんですけどね。
やたら可愛い子犬系です。
もちろんそんな可愛い子犬の煉ちゃんも神凪本家の一員であり、炎術の才に長けていますので勇ましい場面もちらほらと見えます。
が、基本的にまだ子供なのでちょこちょこ和麻に矯正させられているんですね。
和麻も基本的にそっけないんですけどなんだかんだで煉を可愛がっています。
そしていとこであり、和麻と同じく尊敬の対象である綾乃にも可愛がられています。
もはやただの愛玩動物ですね。
和麻のからかいに激した綾乃のストッパー役も買って出ますが(他にいないので)あまり全うできていません。
まぁやっぱりただの愛玩動物ですね。
そんな煉ちゃんもまた和麻に導かれ、またある試練を乗り越える事で、一回りも二回りも成長していく事になります。




この作品は割りと俺TUEEEE作品なのでそういうのが好きな人、
ツンデレ娘が好きな人、
ショタっ子にハァハァしたい人、
カッコいい主人公に身悶えしたい人、
などなどにオススメです。


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