魔女の絶対道徳

「モテない」けど、「求められる」主人公の悲哀。

魔女の絶対道徳 (ファミ通文庫)
エンターブレイン
森田季節

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 魔女の絶対道徳 (ファミ通文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


「私、愛宕輪月は、実は天狗の末裔なんです」
「咒師の、いえ、天狗の頼斗君」
「俺が天狗?」
「はい、態度が」


いや、面白かった!

基本的に暗い設定な感じなんだけれど、それを損なわない程度に、しかしその一方でそこに沈むこともない程度にキャラクターの掛け合いが面白くて、そのバランスが秀逸。

異界の存在がこの世のバランスを崩す事で「崩壊」が起きて、三桁以上の単位で犠牲者が出る。
ゆえにそれを防ぐ為に人知れず均衡を保つ事を生業とする和製魔法使い「咒師」たる主人公。

巷で話題の連続殺人がバランスを崩しかけていた為に解決に乗り出した主人公が出会った二人の少女。
異界の存在である「天狗」の血を引く少女・愛宕輪月と、吸血鬼の少女・千賀矢知理。

天狗は衰退著しく個体数が減り、吸血鬼の少女も己の境遇から同族に出会えない。
そこに本来敵対者たる咒師である主人公がそれなりの濃度で天狗と吸血鬼の血を引いていて・・・という。

「天狗の復権を考えると、天狗に近い血統の相手が必要なんです。大丈夫、愛はありませんから」
「お兄ちゃんでも大丈夫だよ。白馬に乗ってなくても王子様は王子様だから!お兄ちゃんはせいぜい白鳥ボートに乗った王子様だけど胸を張って生きればいいよ!」

ヒロイン二人に消極的肯定というか、愛はいらないから子種くれとか、もっといい条件の相手が見つかるまでのとりあえずのキープとか、赤裸々に求められる主人公の悲哀。
一見するとモテモテなのに物凄い勢いで人格否定のラッシュ&ラッシュ。
ダウン寸前の主人公を誰か救ったげて!!という。

この掛け合いがとにかく面白くて、それでいて崩壊を食い止められなければ己も死ぬという咒師の設定や、ヒロイン二人も犯人の可能性があったり、黒幕の存在とその動機などの暗い雰囲気が絶妙のバランスです。


咒師の設定がまたいいですよね。
一見すると正義の味方なんだけれどその動機が自らの命を守る為っていう。
ご先祖さんが刻んだ呪い。
自らの信念が後世まで受け継がれない可能性を考慮し、それでも咒師という存在を遺すための呪い。
そして、そんな呪いのせいで自らの命を守る為にも解決しなければいけない数多の事件に奔走する主人公が持つほんのちょっとの矜持。
それをズタズタにするような黒幕の存在。
あの主人公が弓を構える挿絵のカッコよさと、流れる会話の悲哀。
とても良かったです。

ヒロイン二人に言い寄られるその設定も良い。
あんまり安易にモテモテなのはいかんのですよ。
まぁ個人的な趣味嗜好ではありますが。
ちょっとした事でコロッといくよりも、積み重ねで徐々に徐々に変わっていく方がやっぱ萌えますって。
その点、この主人公は「モテてない」けど「求められる」という立場。
始まりがこういう損得にあって、そこから繋がる縁がお互いの存在を知っていくためのきっかけになって、積み重ねがデレに繋がればそれが最高なのです。
このヒロイン達が今後の事件を介して主人公に徐々に執着と独占欲を持っていきデレに繋がることを願わずにいられませんね。


この作者の作品はちょくちょく読んでますけど、記憶にある限りではこれが最高傑作かもしれませんね。


作者の作品の感想一覧。
http://otakouta.at.webry.info/201204/article_16.html(デキる神になりますん 1巻)
http://otakouta.at.webry.info/201202/article_20.html(神聖魔法は漆黒の漆原さん 1巻)

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック