吟遊詩人に贈る歌

惚れた女一人幸せに出来ないプライドなんて捨ててしまえばいい。でもそれが出来ないのが男の愚かさだ。

吟遊詩人に贈る歌 (集英社スーパーダッシュ文庫)
集英社
2011-12-22
佐々之 青々

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「約束を守ることより大切なことを、考えてみてください」
「・・・・・・・・・・」
「レント・・・・・自分で自分の幸せを選べないこと――それが一番不幸せです」


まぁ一言で言えばバカな男と男よりも2枚も3枚も上手な女がイチャイチャする話、ですね。
そこに過去の悲恋が関わってきてややこしくなってはいますが、現代の人物だけに焦点を絞るならそういう話です。

好きな女の気を惹く為に大言壮語を口にしたはいいものの、それが果たせそうにないからと彼女を諦めようとするその思考は、なんというか、わりと男特有の思考ですよね?
惚れた女に相応しい自分でありたい。
それが果たせなかった自分程度の男では、彼女は相応しくない。
馬鹿か?
それを決めるのはお前じゃねーよ、と。
どれだけ惚れた女を高嶺に見てるんだよ?と。

でもま、同じ男として、その気持ち自体はよくわかってしまうんですよね。
男って良くも悪くも見栄とか意地とか、特に惚れた女を前にしたら、張ってカッコつけたくなってしまうものなのです。
でも、そんなのは女側からすれば良い迷惑。
下らない、つまらない、馬鹿みたいな感情なのです。
まぁそう言わないでくれ、と。
男ってのは根本的なところで、もうどうしようもない愚かな生き物なんですよ、と。
思わずそう擁護してしまいたくなりますし、全くそういうのがない男よりは好ましいと思うんですよ。

主人公と同じ男の視点から見れば、そういうのは汲んで欲しいし、
かといって読者視点からすれば、あまりに汲み過ぎてヒロインに不幸になって欲しくないし、
つまり、この作品はそういう意味で、実にバランスの取れたハッピーなエンディングを迎えてくれたかな?って思います。

まぁその辺の自分の恋愛観(笑)に関しては別の作品に丁度良いセリフがあるので引用させてもらいますと
「女の子の難度なんて、聞いたらぞっとするわよ? 世の彼女持ちの男の子達は、相手の女の子を攻略したつもりになってるかもしれないけど、――頑張る男の子を見て、女の子が自分から難度を下げたなんて、夢にも思ってないのよね」
って話。
つまり惚れたら負けってのは至言なんですよ。
惚れた女に相応しくありたいと願うその心は良い。
でも、それを最終的に決めるのは自分ではなく、あくまで彼女。
待たせるのがどうのと言うのなら彼女に答えを委ねるべきであって、勝手に諦めるな、勝手に手を引くな、って話。
ま、最初の約束の時点でこれ以上ないくらいに彼女の方が難度を下げていて、それに気付かなかったバカな主人公を追っかけて捕まえてくっついたのだから、もう主人公は彼女に頭上がらないの確定よな、って。
きっと、自分から彼女に決断を委ねていれば少しだけ関係性は違ったでしょうにね。
まぁそれでも約束を正確に覚えていなかった時点でこうなる事は確定だったのかな。
っつーか最初の約束はきっと自分が言った時点で精神的に力尽きてたんでしょうね。
「言ってやった」ってもうそこで半ば満足しちゃった感じ。
そう考えるともうその時点で役者が違うって話でつまりこれも自明の理か。

そんなわけでメインである恋愛部分はトルチのブレのなさがもう可愛くて可愛くて、一方でそれに全く気付かずにウジウジしてる主人公のそれも「バカだなぁ、バカだなぁ」とは思いつつも理解できてしまう類のものだったので、ハラハラしつつ、これ以上ないハッピーエンドを迎えてくれたので、ここ最近じゃ一番嬉しくなれたエンディングでしたね。

あと主人公の心情を垂れ流す魔法人形が随所で良い仕事してます。
コイツがいる限り、トルチはもう主人公から離れられないんじゃないかなってくらい反則級の存在な気がしますね。

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