きじかくしの庭

優しくも清清しく、爽やかな読後感です。

きじかくしの庭 (メディアワークス文庫)
アスキーメディアワークス
2013-02-23
桜井 美奈

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「先生は溺れる前に、水から顔を出せましたか?」

読み終わって、ほっと一息ついて「ああ、良かったな」って、反芻して一瞬だけ浸って「次にいこうか」と、そんな感じです。
いや、それどんな感じやねん!って話ですが、まぁニュアンスは伝わるのではないかと。

特別でっかいことがあるわけじゃなくで、派手なわけじゃなくて、現実にどこにでもありそうな、そんなありふれた悩みと向き合って、付き合って、一歩踏み出して幸いを得るお話、というところですかね?
少しだけ余韻を残すこの幸せな結末が心に染み渡る癒しの余韻というか。

耽溺するような濃いものではなくて、あくまでそれは「余韻」なんですよね。
ベタついていない、清清しさというか、そういうすっきりとした読み心地というか。

恋人の心変わりで突然振られた亜由、誤解から仲たがいした千春と舞、自分の居場所が見つけられない祥子、そして学生時代からの恋人との関係に悩む田路。
教師である田路が毎年やってくる悩み抱える生徒と共に一緒に悩みながらアスパラガスを育てていくわけですけど、この田路先生がまたなんかこう、等身大でいいんだわ。
物語開始当初が自分と同じ年齢なせいもあってか、感情移入出来ちゃうのな。
特別何かに秀でているわけじゃなくて、仕事に対して情熱的なわけじゃなくて、さりとて無気力というのも違ってそのフラットな在り方や恋人に対するあの「ぐぐぐ」って感じの躊躇というか感情と理性という名の見栄や体裁との狭間でどちらにも動きにくくなる感じ。
なんかもうすんごいその感情に共感しちゃってて、頭真っ白になって思わず飛び出たあの言葉に年甲斐もなくキャーキャー喚きながらゴロゴロと転がりまわりたくなりましたね。

それに対する香織の反応がまた読めなくて、全てが終わってしまったと勘違いしたくなるような状況に陥って抜け殻みたいになったあの放心状態とか、なんかもう居た堪れなくて居た堪れなくて・・・・。

エピローグでそれまでに共に悩みを抱えてあのアスパラガスの庭で共に過ごした生徒達が幸せな姿を見せてくれて、田路先生の幸せな姿が見れて、もうなんか万感の想いと共に読み終わって溜息ですよ。
それでいて、そこにいつまでも浸っていたくなるような、そんな中毒じみた甘い感情とは違って少しだけ余韻に浸って一区切りつけたら気を入れて自分も歩き出したくなるような。
そういう優しいんだけど甘くもクドくもない、そういう素敵な読み心地の作品でしたね。


とはいえ、全く同じ時期の話を今度は香織視点で描いてくれたりすると個人的には嬉しいなぁとか思うんですけどね。
田路にこうして感情移入しているだけに、こちらとは違ってメチャクチャに甘くなること請け合いですよ。
バッタンバッタン暴れ回りながら、悶え打ちまわりながら読む自信がありますよ?
そしてどうせならエピローグに登場しなかった志帆と優奈のその後の幸いを得た姿をその香織視点からどうにか見せてくれたらなーとか、思わないでもない。
優奈が田路に好意を持った出来事とかもな!
意外性ありすぎる理由なせいで思わず絆されたわ!
てっきり関根くんの方だと思ったのにねぇ。

ともあれ、次回作にも期待しております。

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